とうつう(いたみ)

疼痛(痛み)

最終更新日:
2024年03月22日
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2024/03/22
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概要

疼痛(痛み)とは、国際疼痛学会によると『組織の実質的ないしは潜在的な傷害と関連した、あるいはこのような傷害と関連して述べられる不快な感覚的、情動体験』と定義されている症状です。具体的には、体にダメージが起こった場合に生じる不快な感覚を指します。

疼痛の要因は多岐にわたりますが、大きくは“侵害受容性要因”と“神経障害性要因”、“心理社会的要因”の3つに分けられます。

  • 侵害受容性要因……体がダメージを受けたときに刺激が神経を経て大脳に伝えられることで生じます(侵害受容性疼痛)。
  • 神経障害性要因……神経や脊髄(せきずい)自体に何らかのダメージが生じることで痛みが引き起こされます(神経障害性疼痛)。
  • 心理社会的要因……職場や家庭内での人間関係や、うつ状態や認知の問題などの状態を指します。

痛みの性質や程度はそれぞれの要因の状況や個人差などによって大きく異なりますが、疼痛が長く続くと抑うつ症状などの精神的な不調を引き起こしたり、活動性が減少して身体機能が低下したりするため注意が必要です。

原因

疼痛の主な要因には以下が挙げられます。

侵害受容性要因

皮膚や皮下組織、筋膜などにある痛覚の受容器が刺激されて脳に痛みの信号が伝わることで、痛みを認識します。痛みを感じる具体的な原因としては切り傷などの外傷や、がんなど臓器にダメージを与える病気、関節リウマチなど炎症を引き起こす病気が挙げられます。

神経障害性要因

手根管症候群腫瘍(しゅよう)などによる神経の圧迫、帯状疱疹(たいじょうほうしん)による神経の損傷をはじめ、糖尿病や薬の副作用による神経痛脊髄損傷などさまざまな原因が挙げられます。

心理社会的要因

抑うつ状態や認知障害、発達障害などの心理的要因をはじめ、成育歴、家族との関係、職歴、職場での人間関係、収入、同居人の有無など、さまざまなことが痛みを増幅させたり減少させたりします。心理社会的要因だけで痛みが起こることは極めてまれですが、心理社会的要因が強いほど痛みが長引く傾向にあるといわれており、診療時には確認が欠かせません。

症状

疼痛の現れ方、現れる部位や痛みの表現は、3つの要因の状態によって大きく異なります。

疼痛は体へのダメージが回復すれば改善するケースが多いものの、本来であれば症状の改善が認められるはずの時期になっても痛みが続いたり、痛みの再発が繰り返し起こったりするケースも少なくありません。

3か月以上継続する疼痛を“慢性疼痛”と呼び、疼痛が慢性化すると日常生活動作(ADL)や患者の生活の質(QOL)への影響が大きくなります。具体的には、抑うつや不安感、イライラ感、恐怖感などの精神・心理的な症状、睡眠障害や活動性の低下による身体機能の異常などが挙げられます。

そのほかにも、学業や仕事に支障が出ることで社会生活に影響を及ぼしたり、自己肯定感が低下したりするといったこともあります。

検査・診断

疼痛には急性疼痛と慢性疼痛があります。両者の原因と治療法は異なるため、しっかりと鑑別を行うことが重要です。

急性疼痛は身体的な病気や外傷が原因となるケースが多く、診断を下すためには痛みが発生した状況、痛みの性状や強さ、範囲などを詳しく聞き取ります。

そのうえで、以下の検査を行い精査することで、急性疼痛の原因となっている病気や外傷を判断し治療します。

  • 画像検査(超音波、X線、CT、MRIなど)……病気や外傷の有無、程度などを確認します。
  • 血液検査……内臓機能の異常、ホルモン系の異常、炎症反応の有無などを確認します。
  • 電気生理学的検査……神経や筋肉に異常がないか調べるため、末梢神経伝導速度検査(まっしょうしんけいでんどうそくどけんさ)*や筋電図検査**などを行います。神経障害性疼痛が疑われる場合に行います。

一方、慢性疼痛は原因が分からないことが多いため、治療できる病変がないことを確認することが検査・診断の主目的となります。慢性疼痛を診断できる画像検査、血液検査などはありません。

*末梢神経伝導速度検査:皮膚の上から運動神経や感覚神経を電気刺激することで、刺激が神経を伝わる速さを調べる。

**筋電図検査:筋肉に細い電極針を刺し、力を入れたり抜いたりした際の筋肉の電気的活動を記録する。

治療

原因となる病気や外傷がある場合(多くの急性疼痛が該当)は、原因の治療自体が痛みの治療となります。原因の治療に時間がかかる場合には、並行して疼痛(痛み)の治療として非ステロイド性抗炎症薬やアセトアミノフェンなどの薬物療法や神経ブロック注射などを必要に応じて行います。

慢性疼痛では原因となる病気や外傷が見つからないことが多いため、急性疼痛に比べると治療に難渋することが多いといわれています。抗うつ薬や抗てんかん薬などが使用されることもありますが、急性疼痛よりも効果は期待できないことが多いとされています。

慢性疼痛の治療目的は『患者の生活の質(QOL)や日常生活動作(ADL)を向上させること』1)であり、治療の中心はリハビリテーションと、認知行動療法などの心理療法や日常生活習慣の改善(体重の適正化、生活時間帯の改善、飲酒の適正化 など)などの社会的介入が中心となり、薬物療法は補助的な治療となります。

参考文献

  1. 慢性疼痛診療ガイドライン作成ワーキンググループ「慢性疼痛診療ガイドライン」真興交易株式会社医学出版部.2021年7月.P24

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